将棋 終盤

 こうして、たまに将棋をやれば、鬼嫁猫と私の立場を逆転することができるかもしれない、たしか羽生先生のライバル森内永世名人も「覆す力」というタイトルの名著を記していたはずである、などと考えていると、鬼嫁猫は部屋の両隅を指さした。部屋の両隅には誰かが鼻をかんだティッシュが落ちている。

 「あんたは『角』や」。

 「角」というのは斜めであればいくらでも進むことができる駒である。要するに、斜めに進んでティッシュを拾って捨ててこい、ということのようだ。

 「角」は「飛車」の次に強い駒であり、その点はなかなか光栄であるが、ティッシュを拾うのもめんどくさいので、「あんたも『角』や」と言ってみることにした。

 すると鬼嫁猫は「私は『金』や」と言って動こうとしない。守りの要、金。なかなかいい駒をいいよる。しかし、ティッシュまでは2マス以上あり「金」では拾うことができないようだ。盤上とは異なり相当手強い。ひとまず今回は私がティッシュを拾うこととした。